年収の壁 政府の対策に企業戸惑い

配偶者に扶養されるパート従業員らが社会保険料の負担を避けるため働く時間を抑える「年収の壁」問題で、政府が10月に導入した新たな対策に企業の戸惑いが広がっている。保険料を負担してでも年収を増やした他の従業員との間で不公平感が生じるためだ。助成金申請をためらう企業も多く、第3号被保険者制度にメスを入れる抜本的な対応を求める声が強い。



「助成金は、もともと『年収の壁』を超えて働いている従業員には支給されない。制度としては使い勝手が悪く、申請には二の足を踏んでいる」

中華料理チェーン「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの広報担当者は、こう漏らす。

総合スーパーのイトーヨーカ堂やライフコーポレーション、コンビニエンスストアのローソンといった多くのパート従業員を抱える流通大手でも、申請は「未定」または「検討中」だという。

政府の対策は人手不足が深刻化した企業の要請に応じたもの。それでも申請をためらうのは、一部の労働者を優遇する制度設計のため「同一労働同一賃金の原則を崩し、現場で不公平感が生じる」(大手スーパー担当者)恐れがあるからだ。

助成制度は令和7年度末までの暫定措置であり、将来打ち切られる恐れがあるのに従業員に働き方の変更を求めてよいのかという迷いもある。

一方、野村総合研究所の調査では、政府の対策で年収の壁を超えても手取り額が減らなくなった場合、配偶者がいるパート女性の6割強が今より年収が多くなるよう働きたいと答えた。「就業時間延長や、転職促進による収入増加で一定の効果が期待できる」という。

ただ、主婦やパート従業員ら第3号被保険者は収入が一定額になるまで保険料を取られない現行制度には不満も根強い。助成金申請を保留する企業の担当者は、政府が7年に予定する次期年金制度改正で「抜本的な改革を求めたい」と訴えた。

(田辺裕晶、田村慶子)

最終更新日:11/6(月)8:21 産経新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6480655

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