防音賃貸住宅 入居待ち急増の理由

防音対策を施した賃貸マンションの人気が高まっている。従来は、音楽家や音大生が主に利用していたが、ユーチューバーや在宅ワーカーなど利用者が多様化している。不動産大手も参入し始めており、今後の住まいの選択肢の一つになりそうだ。



「さあ、ボスを倒しに行きますかー!」

「モスラメソ」の名前でゲーム実況をユーチューブで配信する東京都内の男性(33)は、自宅のパソコンを操作しながら視聴者に呼びかけた。画面上のキャラクターを巧みに操り、敵を倒していく。攻撃を受けると、「イテー!」と大きな声を上げた。

男性が住むのは、防音賃貸マンション「ミュージション」だ。同マンションでは、全居室に防音室が設けられているのが特徴だ。防音室は建物の躯体と接しない構造で、間に遮音材を敷き詰めている。工場内の騒音相当の非常にうるさい100デシベルの音が、壁を通すと極めて静かな25デシベルまで軽減する性能がある。

男性は3年前から配信者として活動。当初は一般的な賃貸マンションに住んでいたため、隣の部屋への音漏れや救急車のサイレンなど外部の音が配信動画に入ることが悩みだった。

防音カーテンを取り入れたり、扉の隙間にテープを貼ったりしたが不安は消えず、今年1月に転居。納戸付き1LDKで家賃は約23万円だ。周辺にある一般の賃貸住宅に比べ、3割ほど高いという。男性は、「大きな声を上げても音漏れの心配がないので快適。視聴者もより楽しんでくれていると思う」と話す。

ミュージションは不動産開発「リブラン」(東京)が手がける。約20年前から音楽愛好家向けに展開してきたが、近年はユーチューバーや在宅ワーカーなど、自宅で仕事をする人、子どもの騒ぐ声が気になる子育て世代の利用が増えているという。

東京中心に約30棟を展開するが、入居待ちの人数は2020年8月の435人から23年6月の3800人に急増。ミュージション事業部次長の三ツ口拓也さんは、「コロナ禍の在宅勤務を経て、住まいの防音ニーズが顕在化した」と話す。

住宅情報サイト「SUUMO」の副編集長、笠松美香さんも「ユーチューバーや声優など、家でもできる仕事が増えてニーズは拡大している。一方で、特殊な構造ゆえ、建築費は高くなる傾向にあって、需要に応えられるほど供給が追いついていない」と話す。

最終更新日:10/13(金)19:10 大手小町(読売新聞)

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6478324

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