昭和感漂うレトロ自動販売機の「聖地」(相模原市南区)が、訪日外国人観光客らから人気を集めている。短時間で温かい食べ物が提供される優れた機械性能をはじめ、提供される商品の豊富な種類や、機械そのものの古さに魅了されている様子。関係者は「新たな国際観光スポット」として期待を寄せる。
「約30秒で温かい物が食べられる。日本の自販機のすごいところだ」。1年半前に来日した米国人シェフのジェームズ・ウエストバーグさん(41)=神奈川県逗子市=が話す。「古い機械が現役なのもすごい」とも。瓶入りサイダーを飲んだ妻のリサさん(44)は「子どもの頃に日本に住んでいたので懐かしい。なんとなく缶入りよりおいしい気がする」と笑った。
聖地は、相模原市南区下溝の「中古タイヤ市場相模原店」にある。温かいそばやうどん、ハンバーガー、瓶入り炭酸飲料、菓子などのレトロ自販機が並ぶ。タイヤ交換の待ち時間に楽しんでもらおうと設置したのがきっかけ。話題になり、他県からもレトロ自販機を受け継いだ。レトロ以外を含めた自販機の設置台数は計112台に上っている。メディアやネットで取り上げられ、今や「名所」だ。
「ユーチューブで見て来たくなった」。セバスチャン・ケミさん(38)とエリック・ヨハンソンさん(34)は、スウェーデンから観光で訪日した。見せてくれたスマートフォンの動画にはレトロ自販機からうどんが出てくる様子が映っていた。
東京の友人宅にホームステイしながら、都内や長野県内の観光を楽しんだ2人。帰国前日、友人に頼んで連れてきてもらった。ハンバーガーやカレーライスをたいらげ、ハンバーガーの外箱を「記念に持ち帰る」と話すケミさん。「パーフェクトなラストデーになった」と笑顔を見せた。
同社広報担当の平間美香さん(56)によると、新型コロナウイルスの感染拡大が収まった春過ぎから、外国人を多く見かけるようになったという。「外国の方にも楽しんでほしい。休日は商品が売り切れになることもあるので、平日のほうが確実かと思います」と話した。【佐藤浩】
最終更新日:10/9(月)9:22 毎日新聞