砂金採りブーム 賠償リスクに注意

最近の金価格の高騰を受け、砂金採取が静かなブームになっている。コレクターに人気の河川で採取された砂金は、純金より高値で取引されるケースがあり、一獲千金の夢に胸を膨らませる人も少なくない。ただ、河川での採掘には法規制があり、鉱業権が設定された場所で採取した場合などには、損害賠償請求の可能性もはらんでおり、注意が必要だ。



■採取体験に行列

江戸から昭和にかけ、佐渡金山(新潟県)に次ぐ生産量を誇ったとされる土肥金山(静岡県伊豆市)。9月16~18日の3連休、跡地の観光施設にある砂金採りの体験コーナーには、長蛇の列ができていた。

順番が回ってきた参加者は数十メートルの細長い水槽に身を乗り出し、専用の皿ですくった砂の中から砂金を見つけるたびに歓声をあげ、指でつまんで大事そうに小瓶に詰め込んでいた。

料金は中学生以上750円、小学生以下650円で、担当者によると、30分の制限時間内に100粒以上を採取した参加者もいたという。

娘2人と砂金採取を体験した岐阜県の男性会社員(45)は「義父母が娘たちに『金が高騰しているから頑張って取ってきて』と言ったらしい。娘2人合わせて十数粒取れてよかった」と話す。東京都内から訪れた岡野直行さん(63)も「たくさんの量を採取できないと分かっていても、(金高騰の影響もあり)期待してしまう」と笑みを浮かべた。

奈良時代に日本で初めて金が産出されたという宮城県涌谷町の「わくや万葉の里 天平ろまん館」の砂金採取体験コーナーも新型コロナウイルス禍を経て、人気が集まっている。担当者は「金高騰の効果が出ていると思う」と打ち明ける。

■高騰する金価格

金の買い取りや販売を行う「田中貴金属工業」(東京都千代田区)によると、金の店頭小売価格は9月21日に1万178円(1グラム当たり、税込み)と過去最高値を記録。8月29日以降、1万円を超える日が続く。

世界経済の減速が懸念される中、有事の安全資産とされる金を買う動きが活発化。さらに円安・ドル高基調が続いており、国内価格をさらに押し上げているという。

砂金の場合は溶解して純度を測った上で、円建ての金価格で取引する例が多い。ただ、宝飾品店「宝石の玉屋」(札幌市)によると、純度を調べる精製費などに数万円かかるため、「相当の量がないと採算が取れない」という。

一方で、純度を調べずとも、砂金そのものが高い資産価値を持つケースもある。

自身も河川で砂金を採取するというファイナンシャルプランナー(FP)の伊藤亮太氏(41)によると、フリマアプリやネットオークション、売り手と買い手が直接会うなどしての取引があり、価格は重さや大きさなどで決まる。

砂金は全国各地で採取できるが、北海道などの珍しい産地や形状ならば、1グラム10万円、平均でも1~2万円程度と純金より高値で買うコレクターがいるといい、「採取場所までの交通費を考えれば安いと考えるのだろう」(伊藤氏)。

■採りすぎ注意!

一獲千金の夢が膨らむ砂金採取だが、河川での作業には法規制が絡む。

国土交通省によると、行き過ぎた採掘行為によって川の形状が変わり、洪水対策などに影響が出ると想定される場合、河川法に触れるケースがある。場合によっては、1年間の懲役または50万円以下の罰金を科される可能性があるという。

経済産業省によると、鉱物を採掘し、取得できる「鉱業権」が設定された地域で採掘した場合、権利者から賠償を求められる可能性もあり、関係者は「河川を管理している土木事務所などに問い合わせてほしい」としている。(植木裕香子)

最終更新日:9/30(土)19:48 産経新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6477001

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