緊急事態宣言をうけ、職場から当面休むように言い渡される人たちが出ています。会社には休業者に「休業手当」を支払う義務があるのですが、実際には支払われないケースが少なくありません。そこで国は、こうした働き手が直接国からお金を受け取れる「休業支援金」という制度を昨年つくりました。ところが、ある条件に引っかかると、支援金の申請ができないという「落とし穴」があります。結果的に休業手当も休業支援金ももらえず、制度のはざまに取り残されている働き手たちがいます。(朝日新聞記者・榊原謙)
「会社が『大企業』にあたってしまうことが分かったんです」
休業支援金は、申請ができるのは「中小企業」で働く働き手、と限定しています。中小企業の定義は、業種ごとに資本金や従業員数などで決まります。男性が会社に問い合わせると、「当社は中小企業の分類に当てはまらないので、(休業支援金は)利用できない」という回答だったのです。
国は、日々雇用やシフト制、登録型派遣など様々な働き方をする人についても、休業前の半年以上にわたって、月4日以上の勤務実績を確認できれば、休業支援金の対象になるとしています。しかし、「中小企業に限る」という規定はそのままです。
結局この男性は、休業手当も休業支援金ももらえませんでした。納得できず、個人で入れる労働組合に加入し、会社側と団体交渉。数カ月を要しましたが、解決金を得たといいます。
それでも、男性はなお、勤め先の規模によって国の支援金が使えないことに憤りを隠しません。
「勤め先が大企業に分類されるだけなのに、申請すらできず、門前払いを食う今の制度には到底納得がいきません」
最近では、大手ラーメンチェーン「一風堂」で働くアルバイトの男性が、営業時間の短縮で減るシフト分の休業補償を求めて、会社と団体交渉をしました。男性や加入労組によると、会社側は未定のシフト分については休業手当を払わない方針といいます。会社は大企業にあたるため、休業支援金の申請もできません。男性にはコロナ禍前は月20万円弱の収入がありましたが、5万円ほどになりそうだと心配しています。
野党などは休業支援金の対象を大企業にも広げることを求めています。ただ、菅義偉首相は「大企業労働者の方については、(国が休業手当を払った企業に助成する)雇用調整助成金の特例を活用していただけるよう、企業に対し丁寧に働きかけを行っていきたい」と述べるにとどめており、実現のめどはたっていません。
最終更新日:2/2(火)11:59 withnews