西九州新幹線1年 全線開通見えず

「日本一短い新幹線」(66キロ)の九州新幹線長崎ルート(西九州新幹線)は23日、武雄温泉(佐賀県武雄市)―長崎(長崎市)間の開業から1年を迎えた。沿線は商業施設や宿泊施設がオープンするなど再開発に沸く。国内唯一の「飛び地」新幹線として、山陽新幹線、九州新幹線鹿児島ルートが通る博多駅(福岡市)とは在来線のリレー特急でつなぐが、佐賀県の未着工区間については国と県が費用負担を巡って折り合いが付かず、全線開通のメドは立たない。



 JR九州は1周年に合わせて、西九州新幹線が1日乗り放題になる「Tシャツきっぷ」を販売。午前4時ごろに長崎駅を訪れ、西九州新幹線のシンボルカラーである赤いTシャツを一番に受け取った、長崎市の元県職員の男性(67)は「開業時は乗ることができなかったため今年は張り切った。ただ、1周年を迎えても(全線で)フル規格でないため手放しで喜べない」と話す。

 おそろいで赤いTシャツを着ていた長崎市の会社員、森正春さん(67)と妻でパートのタミ子さん(64)は「途中下車して、各駅の開業1周年イベントに参加したい。いっぱい楽しむために始発に乗る」と笑顔で新幹線に乗り込んだ。

 午後には、公募で選ばれた約150人が丸洗いした特別新幹線「GO WEST号」の出発式が長崎駅ホームであった。一日駅長として出席した長崎出身のタレント、長濱ねるさんは「東京に住みながら、いつも長崎に思いをはせている。長崎は地域によっていろんな魅力がある。ぜひ全国の人に新幹線を使って訪れてほしい」とあいさつ。JR九州の古宮洋二社長は「これからも西九州新幹線をたくさんの人に利用してもらうことが我々にとって一番大事なことだ」と語った。

 開業1年を前に、九州経済調査協会(福岡市)は長崎経済研究所(長崎市)と影響について調査。長崎、佐賀両県の駅周辺で大型商業施設や外資系ホテルの建設が相次ぐなど経済波及効果は1736億円に上ると推計する。

 ただ、効果の範囲は限定的で、新幹線開業の影響について質問したところ、回答した福岡、佐賀、長崎3県の443社のうち、「プラス」が15・3%にとどまる一方、「影響はない」が81・5%、「マイナス」が3・1%だった。

 西九州新幹線の整備計画は1973年に決まり、2008年に武雄温泉―諫早(長崎県諫早市)間が、12年に諫早―長崎間がそれぞれ着工し、建設費は約6200億円だった。

 国は当初、レール幅が異なる在来線と新幹線の両方を走行できるフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)を開発し、新鳥栖(佐賀県鳥栖市)―武雄温泉間は在来線の線路を使って博多駅までつなぐ計画を立てたが、技術的に困難として、18年にFGT導入を断念。その後、全線フル規格の新幹線整備に方針転換した。【松本美緒、久野洋、下原知広】

最終更新日:9/23(土)16:56 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6476230

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