公正取引委員会は21日、巨大IT企業が手掛けるニュースのポータルサイトの実態調査報告書を公表し、記事を配信している報道機関へ支払われる「許諾料」について、サイト運営会社によって最大5倍の開きがあることを明らかにした。公取委は、サイト運営会社側に「許諾料の算定方法を可能な限り開示することが望ましい」と提言し、著しく低い許諾料を設定することは、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)に当たると警告した。
「ヤフーニュース」に代表されるニュースのポータルサイトは、新聞社やテレビ局、雑誌社が取材、配信した記事を集約して掲載している。消費者行動や流通構造の変化に伴って、ニュースに触れる機会がネットを介した閲覧に移行しつつあり、ポータルサイトの存在感が高まっている。こうした中、報道機関側とサイト運営会社側の取引条件のあり方が課題になっていた。
公取委は、配信元の報道機関319社を対象にアンケートを実施し220社から回答を得たほか、ネットでニュースを閲覧する利用者2000人や、サイト運営会社、ネット検索事業者にも聞き取り調査をした。
報告書によると、最も利用する文字情報のニュースサービスを利用者に尋ねたところ、ポータルサイトとの回答は2022年度が47・0%で、13年度の20・1%を大幅に上回った。
ただ、サイト運営会社が報道機関側に支払う許諾料は1000ページビュー(PV)当たり最大251円、最小49円と5倍の開きがあった。公取委が許諾料の具体的な価格を明らかにするのは異例で、サイト運営会社がその地位を利用して報道機関に不当に不利益を与える場合は、優越的地位の乱用になると指摘した。
その上で、許諾料を決めた根拠や算定方法を可能な限り開示し、記事の利用許諾の契約更新時に、報道機関側から求めがあれば十分に協議するようサイト運営会社側に呼び掛けた。
また、サイトのトップページにある主要ニュース欄に記事が掲載されることは報道機関の収益に大きく影響することから、公取委は「トップページへの選定基準を可能な限り具体的に明示することが望ましい」とも言及。基準を恣意(しい)的に運用して記事掲載の機会を減少させた場合は、やはり優越的地位の乱用になるとしている。
さらに公取委は、グーグルやヤフーのようにネット検索で記事を閲覧するサービスについても取り上げた。検索の結果、記事の一部が表示される「スニペット」で概要を理解している利用者が一定数いることを指摘し、著作権法上、報道機関の許諾が必要となるケースもあると述べた。【渡辺暢】
最終更新日:9/21(木)19:10 毎日新聞