庶民的な価格で寿司を食べられる「回転寿司」は、いまや国民的グルメ。その一方で、各社が熾烈な争いを繰り広げている。なかでも売上高首位の「スシロー」、2位の「くら寿司」、3位の「はま寿司」は“御三家”と呼ばれ、業界を盛り上げている。
そんななか、かつてはトップに君臨していた「かっぱ寿司」は第4位と、他社に水をあけられている。 今回はカッパ・クリエイト株式会社 執行役員 マーケティング本部部長の牛尾好智氏に、生き残りをかけた事業戦略や2016年からの再起をかけたリブランディング、そして今後の展望について話を聞いた。
とりわけ販促活動においてはマーケティング部を立ち上げ、役割ごとにPRやWeb、宣伝などの専任職を置き、数字が追える体制を整えた。直近2年間はプラスに転じるための下積みとして「組織の活性化やチームの立ち上げといったトライ&エラーを繰り返してきた」と牛尾氏は振り返る。
「足が遠のいたお客様に、再び来店してもらうため、メニュー開発やキャンペーン施策、販促活動、新カテゴリーの創設などさまざまな挑戦をしてきました。出だしは赤字でもできるところから始め、業績が改善されるにつれて、『トライ&エラーできる企業体質』に変わってきた。ようやくスタート地点に立てたと思っています」
筆者は今回の取材のために「三鷹店」と「大和下和田店」に出向いた。前者は最寄りから徒歩30分、後者は徒歩15分。日常生活圏内でないと、なかなか足を運びづらいと感じた。
「立地や店舗数は正直言って他社にはかなわないと思っています。基本はメインターゲットであるファミリー層を中心にロードサイド店舗が多いのが現状です」
また、寿司ネタ以外のサイドメニューやデザートのバリエーションも拡充し、来店客の多様なニーズに応えられるようにしている。なかでも一番好評なのは2018年から始めた「本格ラーメンシリーズ」。“有名店の味を身近なかっぱ寿司で”をコンセプトに人気の飲食店監修のもと、リーズナブルな価格で本格的な味を提供している。
えびそば、家系ラーメン、煮干しラーメンなど、シリーズ12弾まで続いており、第1弾から第11弾までの累計販売数は実に780万食を越えるという。
「『本格ラーメンシリーズ』は2~3か月に一度のペースで展開しており、寿司好きはもちろんラーメン目当てのご来店も多いです。話題喚起としてのキャンペーン効果は高いと実感しています。サイドメニューそのものが『回転寿司チェーンだから許されるフォーマット』ゆえ、サイドメニューは重要視するべきです。
ただ、立ち位置や定義を決めておかないとあまりヒットしない。他社に劣らぬようにスピード重視のメニュー開発を行っていますが、そのサイドメニューが果たす役割は明確に意識しています」
そして、かっぱ寿司の認知度を高める緻密なメディア戦略を画策していく予定だという。
「スマホやテレビ、SNS、雑誌など“情報戦争”とも呼べる状況下でどう露出していくかが鍵になると考えています。トライ&エラーを繰り返すなかで、年代ごとに情報に触れる媒体の特徴が異なることがわかってきた。そのため、どの媒体でどのようなプロモーションを行えば、ターゲットとなる年代に刺さるかを考えながら予算を投下し、かっぱ寿司のブランド認知を図っていきたいと思います」
「これからの5年は本流である寿司にフォーカスし、再び業界上位へ浮上できるよう取り組んで行きたい」と語る、牛尾氏。かっぱ寿司が首位奪還のためにどう展開をしていくのか期待したい。
<取材・文・撮影/古田島大介>
最終更新日:2/1(月)12:19 bizSPA!フレッシュ