観光業界「脱中国」シフトの動き

東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出による中国人観光客の回復遅れで日本の観光業界への打撃が懸念されてきたが、影響は限定的なのが実情だ。ほかの国からの観光客を確保できているためで、影響はむしろ中国企業に出ているとの指摘もある。中国では9月末に「国慶節」(建国記念日)の大型連休が始まるが、これまでの流れを教訓に中国頼みを回避しようと、業界の〝脱中国〟への転換の契機となる動きも出てきた。



「処理水放出問題の影響はない」。大阪市内のホテル関係者はこう口をそろえる。観光庁の7月推計で全国の客室稼働率は57・8%と新型コロナウイルス禍前の令和元年(63・3%)の9割超まで回復。大阪市内のあるホテルでは国内客や中国以外の国・地域からの予約で満室続きだ。

リーガロイヤルホテル京都(京都市下京区)は中国からの予約は少ないが、国慶節の連休がある今年9、10月の稼働率は前年同期から30ポイントも急回復する見通しとなっている。

幾度も報道される中国人客による日本旅行の大量キャンセルは「(訪日旅行を生業にする)中国の旅行会社に出ている」(大阪観光局)。中国の旅行会社はコロナ禍前に大量の団体旅行者を日本へ連れて来たが、「受け皿は中国人が経営する店も多かった。最も影響を受けるのは中国系の企業との見方もできる」(旅行業界関係者)。

日本の旅行会社への影響も指摘されるが、7月の主要旅行業者の訪日客の取扱額は令和元年7月比で85・6%まで回復。取扱額全体に占める割合も約5%にすぎない。

さらに観光業界では脱中国にシフトする動きが出始めた。訪日旅行業のフリープラス(大阪市中央区)の男性幹部は「中国以外の国(からの集客)で忙しくさせてもらっている」と話す。「中国にも上流階級に位置づけられる知識人は処理水放出を冷静にみる人が多い。こうした層の動向を見守りながら富裕旅行の獲得につなげたい」と特定の国に依存しない重要性も示した。

星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路(よしはる)代表は、日本は欧米市場に注力した観光戦略にシフトすべきと指摘する。滞在日数が長い欧米客の割合が高まれば1日当たりの客数が減りオーバーツーリズム(観光公害)緩和にもつながるとみる。今年1~5月でもアジア圏の訪日客が約7割と、京都よりアジア系の観光客が多い大阪の課題を挙げ「大阪の魅力をどう欧米に発信するかが重要」と強調する。

観光業以外では、全国百貨店の7月の売上高も元年同月比で1・5%減とほぼコロナ禍前水準に達し円安効果もあって免税売上高はコロナ禍前を初めて上回った。

外食市場も同様で、日本フードサービス協会の加盟会員約3万7千店における7月の売上高は前年同月比14・2%増。元年同月比は12・6%増でコロナ禍前を超えている。(田村慶子)

最終更新日:9/18(月)19:45 産経新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6475779

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