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人生で起こるさまざまなイベントを疑似体験することができるボードゲーム「人生ゲーム」。発売55周年を迎えた今年、8代目人生ゲームが発売された。発売以降、社会の変化による価値観の変化や時代に合わせた出来事を反映してきた人生ゲーム。その歴史や8代目がどう変わったのかについて、タカラトミー(葛飾区)の開発担当者に話を聞きに行った。
■「昆虫食」なども
初代人生ゲームは昭和43年に発売された。当初は、米国で発売されていた「THE GAME OF LIFE」を日本語に訳したもので、「牧場のあとつぎになる」「羊がとなりの家のランを食った」など、米国の文化が色濃く反映されたマスが多かった。
58年に発売された3代目からは、日本オリジナルのマスを採用。「お世話になった人達にお歳暮を贈る」など、日本ならではのイベントが取り入れられるようになった。
その後は時代の変化によってマスも変化。8代目では「映える昆虫食を考案」「ペットの乱入でリモート会議が和んだ」など、世相を反映したマスがいくつも採用されている。
そんな中、目に留まったのが「直毛の羊を発見!」のマスだ。
開発に携わった池沢圭さん(37)に尋ねてみると、「初代の人生ゲームにも登場した羊のネタは、歴代の担当者が引き継いで毎回入れるようにしている」という。
■結婚はルーレット次第
8代目で最も大きく変化しているのが「結婚」に関するシステムだ。これまでは、ゲームの過程でプレーヤー全員が必ず結婚する設定になっていたが、8代目ではルーレットで奇数が出た場合は、結婚をしないまま進行することになった。
池沢さんは「今まで以上に、生き方が多様化している中で、結婚も今までみたいに絶対しなければいけないルールにしなくてもいいのではないか、という意見があった」と変更に至った背景を振り返る。
それに応じてマスの表現も変化。従来は「子どもが生まれる」だったが、8代目では、「子どもを迎える」に。「(ゲーム中で)結婚しないケースも出てきたので、表現に幅を持たせた」(池沢さん)という。
■コミュニケーションの場に
人生ゲームには初代から8代目までの「スタンダード版」のほか、キャラクターとのコラボレーションや、より世相を取り入れたシリーズも展開されており、合計すると既に70作以上が発売されている。
だが、一部を除き、ルーレットを回して出た数を進み、お金を多く獲得した人が勝利という基本的な遊び方は変わらない。電子決済が普及している今でも、変わらず紙幣を採用しており、「現金に触れる機会が減る中、ゲームを通じて釣り銭や両替を学べる点がいい」という声も多いという。
変化を遂げながらも、変わらないよさも守り続ける人生ゲーム。
池沢さんは「人生ゲームを通じて親子が将来の夢について話すように、コミュニケーションを楽しんでほしいというのが一番の願い。少し時間はかかるけれど、これからもコミュニケーションのツールとして楽しんでもらえればうれしい」と話した。(長橋和之)
最終更新日:9/16(土)17:04 産経新聞