欧州中央銀行(ECB)は14日の定例理事会で、主要政策金利を現行の4・25%から0・25%引き上げ、4・5%とすることを決定した。利上げは2022年7月以降、10会合連続。欧州経済は減速が顕著になりつつあるが、高い水準にとどまる物価上昇(インフレ)の抑制を優先した。
ユーロ圏の8月の消費者物価指数の上昇率は前年同月比5・3%とピークだった22年10月の10・6%の半分の水準となったが、依然、ECBが掲げる2%の物価目標を大きく上回っている。
ECBは14日に発表した経済見通しで、ユーロ圏20カ国の23年のインフレ率を前回見通し(6月)の5・4%から5・6%に引き上げ、24年を3%から3・2%に上方修正した。
足元では、サウジアラビアとロシアによる原油減産の継続で原油価格が再び上昇。ラガルド総裁は会合後の記者会見で利上げの理由としてエネルギー価格の高止まりを挙げ、「インフレは減退が続いているが、それでも高すぎる水準が長く続くことが予想される」と述べた。
利上げを続けるECBだが、欧州では利上げの影響で景気減速の懸念が強まっている。
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は11日に発表した最新の経済見通しで、ユーロ圏20カ国の23年の成長率予測を前回(5月)発表した1・1%から0・8%に引き下げた。24年の見通しも、1・6%から1・3%に下方修正した。
ECBも14日に発表した経済見通しで、23年の成長率を前回の0・9%から0・7%に、24年を1・5%から1%に下方修正した。
ユーロ圏で特に落ち込みが目立つのが、欧州経済の屋台骨であるドイツだ。7月の鉱工業生産は前年同月比2・1%下落した。中国への輸出の減少などで自動車の生産も低迷。4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前期比0・0%と横ばいだったが、年後半は落ち込みが予想されており、欧州委はドイツの23年の成長率をマイナス0・4%と予測している。
景気よりインフレ抑制を優先した形のECBだが、次回10月の会合では、経済状況を慎重に見極めながら利上げ継続の是非を判断するとみられる。【ブリュッセル宮川裕章】
最終更新日:9/14(木)23:28 毎日新聞