ANAホールディングス(HD)が29日発表した2020年4~12月期決算は、最終的なもうけを示す純損益が3095億円の赤字(前年同期は864億円の黒字)だった。赤字額はこの期間として過去最大。国際線は昨春以降、需要の大半が消失。国内線も「第3波」とされる新型コロナウイルスの感染拡大で再び落ち込んでいる。
売上高は前年同期比66・7%減の5276億円、本業のもうけを示す営業損益は3624億円の赤字(同1196億円の黒字)だった。この9カ月間は、国際線の旅客数は大幅減が続いており、前年同期比で約96%の減少。国内線の旅客数も同約72%減。観光支援策「Go To トラベル」事業の効果もあって秋に復調に転じていたが、事業の全国停止で12月には年末年始のキャンセルが相次いだ。
2度目となる緊急事態宣言が出たことなどもあり、足元の不透明さは増している。21年3月期の業績予想を発表した昨年10月段階では、旅客需要が今年3月には国内線でコロナ前の7割、国際線で5割まで戻るシナリオを前提としていた。だが、感染「第3波」で「大きく変わろうとしている」(福沢一郎・常務執行役員)。
ただ、売上高が前年比62・5%減の7400億円、純損益が5100億円の赤字とする予想は、今回変更しなかった。昨年9~12月の国内旅客需要が計画を上回ったうえに、自動車や半導体関連を中心に荷物の運送の引き合いが好調で、この3カ月間の国際貨物収入は過去最高だった。福沢氏は、これらの収益の蓄積によって、今年1~3月の旅客需要が多少下ぶれしても補えそうだとする現時点の見通しを示した。
ANAHDは、社員の給与削減など費用カットに取り組み、毎月の現金流出はピークだった昨年春と比べると抑えられてきている。当面の資金繰りにもめどをつけており、昨年6月までに借り入れや融資枠で約1兆円を確保。秋以降には、一部が資本とみなされる「劣後ローン」で4千億円を、増資で2960億円をそれぞれ調達することで、借金と自己資本のバランスもひとまず安定的な水準を保っている。自己資本比率は、旅客需要の減少が続いているにもかかわらず12月時点で31・9%と比較的高い。
ただ、旅客需要が正常化するまでの道筋はみえていない。感染拡大が長期化すれば、追加の手立てを迫られる可能性もある。(友田雄大)
最終更新日:1/29(金)23:46 朝日新聞デジタル