サンマ異例の高値 市場関係者驚く

秋の味覚・サンマが21日朝、東京・豊洲市場に今シーズン初めて入荷した。昨年より1カ月以上遅く、卸値は1キロ当たり20万円、1匹2万5000円と同市場で過去最高値を付けた。サンマを取り巻く環境は依然として厳しく、今年も不漁が続きそうだが、初物の登場に魚市場は活気を見せた。(時事通信水産部 岡畠俊典)



◆初競りマグロを超えるキロ単価

 例年、漁の解禁直後の7月中旬にお目見えしていた「初サンマ」。近年の不漁を反映するように、今年は8月後半に入ってようやく初水揚げとなった。北太平洋の公海で操業していた小型船4隻が、今月18日夜から19日朝にかけ、北海道の花咲港(根室市)と厚岸港(厚岸町)で計約1.6トンを水揚げ。産地では、競りの最高値が1キロ当たり13万円にまで高騰した。

 豊洲市場に運ばれてきたサンマは、このうちの約500キロ。わずか10匹(1.1キロ)だった昨年7月の初荷に比べて急増したものの、今年も低調なスタートとなった。一方で希少な初物だけに、入荷した中で最も大きい1匹120~130グラムサイズの卸値は1キロ当たり20万円を付け、同市場で過去最高値だった昨年(同12万円)を大きく上回った。

 高級クロマグロでもめったに出ない「ご祝儀相場」。1キロ単価では、今年1月に豊洲市場で行われた初競りの青森県大間産「一番マグロ」(1キロ当たり17万円)を超えた。市場では基本的に、1キロ単価が魚の評価や価値の指標となる。1匹の価格に換算すると、212キロで約3600万円だった今年の一番マグロに対し、大きさが全く異なる2万5000円の初サンマが見劣りするのは否めない。だが、価格が高騰しやすい初物とはいえ、以前よりも脂が薄くほっそりとしたサンマが、身質や脂乗りなどが高く評価された大型マグロのキロ単価を上回るのは珍しい現象だ。

 一方でサンマは、買い手が競い合うほど値段が上昇する競りではなく、業者同士の交渉による「相対取引」で価格が決まる。入荷が潤沢だったときのサンマ価格は、1キロ当たり500円前後だったが、「競りでもまれな超高値」(同市場関係者)に驚きの声が広がった。

◆漁獲回復の願いと漁師への感謝

 最高値の初物を入手した仲卸「山治」の山崎康弘社長は「市場を少しでも盛り上げたかった。鮮度は良く、刺し身などがお薦め」と話した。米国向けに輸出されたほか、都内のすし店などが仕入れたという。このサンマとは別だが、都内では1匹2000円前後で販売する鮮魚店もあった。

 異例の超高値は、漁業者に対するエールの意味合いもあった。販売した豊洲市場の卸会社「中央魚類」生鮮一課チームリーダーの小松慎一郎さんによると、同社が取り扱ったサンマのうち、大きめの1匹120~130グラムサイズが詰められた魚箱は、わずか2箱(1箱1キロ)。それぞれ1箱20万円と同19万円の計39万円で、どちらも山治が購入した。

 計39万円としたのは、理由がある。「39(サンキュー)=ありがとう」。中央魚類の小松さんは「命懸けで取ってきてくれた漁師さんへの感謝の気持ちを込めた」と説明する。山治もそれに賛同した形だ。売り場には、秋本番の漁獲回復を願うように、初荷を祝うのぼり旗が飾られていた。

 同じく初物が競りにかけられた札幌市中央卸売市場では、最高値が1キロ当たり23万円を付け、こちらも「超高級サンマ」となった。

◆今年も「低水準」と予測

 ただ、今年もサンマは低調な水揚げとなる見通しだ。全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)によると、2022年の水揚げ量は1万7910トンと、4年連続で過去最低を更新。水産庁は、今年の来遊量も昨年と同様の「低水準」と予測している。漁場も日本から遠く離れた公海を中心に形成されるとみられている。

 豊洲市場に今季初めて入荷したサンマは、1匹100グラム以下の小型で細身が目立った。かつて200グラム級の大型もあった豊漁時代には、小売店などに並ばず、冷凍されて缶詰用などに使われていたサイズだ。近年は不漁に加え、小型化も深刻になっている。

 今シーズンも厳しい漁模様が続きそうだが、8月下旬には大型船も出漁した。「不漁でも大きくておいしいサンマが取れてほしい」(豊洲市場の卸会社)と、サンマ復活を待望する声は多い。

最終更新日:8/28(月)20:10 時事通信

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6473619

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