コロッケ20円 赤字でも据え置く訳

「コロッケ20円」

 神奈川県相模原市南区の相模女子大近くのバス通り。弁当店の看板の文字に目を奪われた。この物価高の世に20円? 500円玉大のミニサイズか? 後日、買いに行った。



 梅雨なのに真夏のような暑さの昼下がりで先客はいない。コロッケ2個だけ買うのはためらいがあり、メンチカツ(100円)も購入すると、整理券を渡された。揚げたてを出すようだ。140円を支払った。何と、税込み価格だった。

 コロッケは見慣れた小判形。縦約8・5センチ、横約6・5センチ、厚さ約1センチ。ソースをかけて食べてみると、ごく普通のポテトコロッケだ。特別おいしいわけではないが、あっという間にたいらげた。夕食のおかずにも中高生のおやつにもなるだろう。しかし何で20円なのか。赤字では?――店を経営する久保商事(相模原市南区)を訪ねた。

 食品卸業の同社は、相模原市内に弁当店4店舗も経営する。全店舗でコロッケは20円で、別の製造業者から毎週1万個弱を仕入れ4店で販売するという。

 久保孝典社長(48)によると、いつでも20円にしたのは1994年から。それまでは「確か30円か40円」で、雨の日やセールの時などに不定期で20円にしたが、客から「次はいつなの?」という声が上がってきたので「毎日20円にしよう。本格的に看板に入れてしまおう」と決めた。採算ぎりぎりだった。

 それから「『20円コロッケ』が皆さんに浸透しているので、行けるところまで頑張ってみよう」と、他の品を値上げした際もコロッケは据え置いた。

 ただ、食用油の価格は新型コロナ禍前と比べると3倍程度に。「油のことを考えると20円では、まあ赤字ですよね」と久保さん。「値上げしてもいいんじゃない?」と言ってくれる客もいるが、「(20円コロッケで)しのいだ時期があって、助かった」などという声も耳にしていて、今のところ値上げするつもりはない。「値上げしたら、看板を全部変えないといけない」と久保さんの父で会長の末人さん(73)も笑う。コロナ禍では、店外の客と接するという形態だからなのか、ほとんど影響は出なかったという。

 コロッケは個数制限をしていない。時には、自治会のイベントなどで200個を超す注文が入ることも。「コロッケだけを購入されるのは、どうなんですか」と聞くと、久保さんは「お客さんが喜んでくれるのなら」と意に介さない様子だった。【佐藤浩】

最終更新日:7/16(日)12:29 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6469481

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