「高すぎ」新幹線の輸出に影

日本の新幹線輸出唯一の成功例、台湾高速鉄路(高鉄)が1月20日、日本企業連合の新規車両購入に関する交渉を打ち切り、第三国からの購入も含めて新たな調達を模索することとなった。高鉄の今回の決定は第2次安倍政権以降、国策として推進してきたインフラ輸出にも今後大きな影を投げ落とすこととなろう。



 高鉄はこの日、役員会を招集。日立製作所・東芝を中心とする日本企業連合の新規車両購入に関する対応を緊急討議した。高鉄は2019年2月、旅客需要の伸びから新規車両購入を決定、世界の車両メーカーに入札を呼びかけたが応じたのは日立・東芝を中心とした日本企業連合だけ。この時、入札価格と高鉄側希望価格の間に大きな隔たりがあったため、昨年8月に再度入札を行ったが、価格差は埋まらずこの決定に至った。

「日本から購入した700Tはまだまだ使えるのにパーツは提供してもらえなくなった。新規車両購入に追い込まれたあげく、応札してきた価格は倍以上。日本の古き良き商道徳はどこへ行ったんだ。これではもはや話のしようもない!」(同)

 日本企業連合はN700Sに若干の台湾仕様を施すものの、基本はフルスペックでの購入を譲らないという。日本では台湾高速鉄道を日華親善協力の象徴と受け止められているが、台湾の受け止め方は決して日本とは一致しない。特に高鉄の日本に対する不信感は開業のはるか前まで遡ることができる。

アメリカはクリントン政権時代、対中関係を重視して台湾のF16売却を拒否。台湾は仏独に代替武器を求めるほかなかった。フランスはミラージュ200-5を60機台湾に売却した。それとバーターで高鉄が日欧代理戦争に勝利することとなったというのだ。

 これにあわてたのが橋本龍太郎、小渕恵三の2人で、何とか逆転発注しなければいけないと親台派の梶山静六、佐藤信二らを台湾にお百度参りさせ、政財界要路に対する工作を開始した。当時を知る台湾政商はその熱気は凄まじいもの立ったと振り返る。

最大の納入業者だった川重は高鉄への納入後、台湾海峡の向こう側で高速鉄道を模索していた中国と車両、技術提供の契約を結ぶ。これに葛西氏は世界一安全な日本の新幹線とその運行システムが中国に盗まれると強硬に反対。JR東海自体が中国との関係を結ばなかったばかりか、川重をN700Sの開発から外してしまう。

 川重は中国に対し、単独でJR東日本のE2系をベースに3編成を完成品として納入。ライセンス契約も取得した中国は6編成分を部品として輸入した後、ノックダウンで完成させ、中国国内で51編成を製造。2005年から2015年までの間に60編成を中国にもたらした。葛西氏の懸念するように中国と川重は運行速度などでもめごとはあったものの、同時に中国はシーメンス、ボンバルディアなど世界的な車両メーカーからも車両と技術を導入。中国は日欧から導入した車両、技術を種子として独自に開発を進め、浙江省温州で重大事故はあったものの今では営業距離で3万kmを超える高速鉄道網を築き上げてしまった。

最終更新日:1/23(土)17:16 東洋経済オンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6383036

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