介護・医療・保育分野の人材紹介業者が、働き手に「お祝い金」などを出して転職を促す違反行為が広がっているとして、厚生労働省は実態調査に乗り出す。人手不足の業界につけこんで紹介手数料を稼ぐ悪質な業者を取り締まる狙いだ。
これらの分野ではハローワークで働き手を十分集められず、人材紹介を活用する場合も少なくない。紹介手数料は一般的に年収の3割前後が相場ともいわれる。
関係者によると、業者がある施設に紹介して数カ月の働き手に「職場に満足していないなら転職してはどうか。成功したらお祝い金を数万円出す」などと持ちかけ、別の施設を紹介するケースがあったとされる。
お祝い金を出して転職を促すことは、すべての業種において、2021年4月に職業安定法に基づく指針で禁止された。
だが厚労省が21年度に人材紹介業の約4300事業所に定期的な調査を行ったところ、お祝い金に関する違反が8件見つかった。罰則がないため、「今も横行しており、職員がすぐに仕事を辞めてしまうことも多い」(全国老人福祉施設協議会の田中雅英副会長)という。
お祝い金は内閣府の規制改革推進会議でも問題視されてきた。事務局は「違反業者の事業許可を取り消すなど厳しい対応が必要だ」と指摘する。
これを受けて厚労省は年度内に紹介業者と施設側の両方から実態を聞き取り、24年度に規制強化を検討することにした。
最終更新日:6/29(木)7:55 朝日新聞デジタル