経済効果15兆円?海風を電力に

菅義偉首相は1月18日の施政方針演説で、「2050年の脱炭素社会の実現」を改めて掲げた。その切り札として期待されるのが、海上に風車を設置する洋上風力発電だ。温室効果ガスの排出がなく、現在複数の区域で事業化が検討されている。将来的には日本の主力電源になる可能性もある。ただし、現状での実績は皆無に等しい。洋上風力は日本の希望となるのか。銚子沖や事業者を取材した。(取材・文/ジャーナリスト・小川匡則)

今、洋上の風力発電に大きな注目が集まっている。重要な国家プロジェクトとして進められているからだ。

首相就任直後の昨年10月の臨時国会で、菅義偉首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。カーボンニュートラルとは二酸化炭素(CO2)の排出と吸収がプラスマイナスゼロのこと。実現のためには、二酸化炭素排出量の多い石炭火力発電所を休廃止し、再生可能エネルギーを普及させることが必須。その再エネの切り札として期待されるのが洋上風力発電だ。

茨城県神栖市の護岸から約50メートルの洋上に15本の風車が立ち並ぶ。運営するウィンド・パワーの小松崎忍専務は、運転開始は2010年だと語る。

「1997年の京都議定書で二酸化炭素削減の動きはあったものの、再生可能エネルギーを導入していこうというほどの機運はなかった。当時、周りからは『洋上風力なんて苦労してわざわざやるほどのことなのか』と驚かれました。しかし、その頃からすでに欧州では洋上風力が本格的に始まっていたんです」

洋上風力の推進に向けては、政府と事業者、メーカー、建設会社などの産業界による「官民協議会」が設置され、昨年12月には「洋上風力産業ビジョン」を策定した。前出のエネ庁・山本氏は「ビジョン」の取りまとめに至った経緯をこう説明する。

「洋上風力を主力電源としていくためには、産業競争力を強化し、発電コストを低減していくことが必要です。コストが高いままでは国民の理解が得られず、継続的に洋上風力発電所設置の案件を形成することが困難になります。そこで官民による協議会が設置されました。産業界からは『カギとなるのは投資の拡大だが、そのためには日本の市場拡大の見通しがないと難しい』という声があり、上記ビジョンでは、政府による導入目標などが設定されました」

こうして出されたのが梶山大臣の導入目標だった。昨年6月に先行して促進区域に指定されていた長崎県五島市沖で公募が始まったのに続き、11月には三つの促進区域で公募が始まった。その一つが冒頭の銚子沖で、他の二つは秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖の北側・南側だった。

日本では、この浮体式に取り組む必要があるとエネ庁の山本氏は言う。

「我が国は海底地形の勾配が急です。欧州は遠浅の海底地形が多いため着床式で展開しやすいのですが、我が国では着床式のポテンシャルは限られてきます。その点、浮体式は、我が国の広大な海域をさらに生かすことができる。実用化に向けて官民で取り組んでいく必要があります」

浮体式の研究について、日本は他国に先行していると話すのは、経産省の審議会「洋上風力促進ワーキンググループ」で座長を務めた足利大学の牛山泉理事長だ。

「日本では福島県沖や長崎県五島市沖ですでに実証実験をやっています。ヨーロッパでも何カ所かやっているが、国としては日本が先行している。浮体式の技術を確立することは日本の強みになります」

ただし、梶山経産相が掲げた「今後10年間で原発10基分に当たる10GW」という目標は、じつは言葉足らずな部分がある。

最終更新日:1/22(金)18:41 Yahoo!ニュース 特集

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6382992

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